2009年9月8日火曜日

詩唱の練習

トロッタ9から参加してくださいました、俳優の中川博正さんと、詩唱の練習をしました。ひとつの課題として、以前から抱えていたことです。朗読といい詩唱といい、男声は、これまでずっと、私が担当してきました。他の人が詩唱をしたら、どうなるだろう? さらには、これまで私が詠んできた詩を、他の男声で詠んだ場合、どうなるのか? まったく異なる声ですから、お客様には違って受けとめられ、違う人間が詠むのですから、解釈も違うものになります。私の解釈に沿って詠んだとしても、違う表現になるでしょう。肉体が違いますし、人の歴史が違いますから。そこに期待をしてきたのです。

中川さんは、私と詠み分けます。私の詩が、違った男声で詠まれていきます。仮に、その詠み方は違うのでは? と思っても、自分の考えを押し付けたくありません。私と解釈が違えば違うほど、おもしろいと思います。一応は考えを伝えますが、その先は、おまかせでいいと思っています。作曲の方々に、私はこれまでずっと、その態度で通してきました。この詩はこういう意図で書いたから、こういう音楽にしてほしい、ということは一切いっていません。一言一句変えないでほしいともいっていません。むしろ、どんどん変えてほしいといっています。

清道洋一さんの『アルメイダ』では、私が書いた詩は、ほとんど原形をとどめなくなりました。清道さんによるテキストが、相当の分量を占めます。それでいいと思っています。清道さんは、私の詩に触発されて、自分でテキストを書いたのですから。私の詩がなければ、彼は書かなかったわけです。トロッタ10では、田中隆司さんが、やはり同じような手法で、私の詩を変形させました。3つの詩を一曲にまとめた結果、完全に田中さんの詩になりました。私自身、その詩はいいなと感じ入りました。実は、私が書いた詩の一行なのです。共同作業のおもしろさが現れました。

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